ウンのいい日


打ち合わせの帰り道、友人と三人で夕飯を食べました。
楽しく語らいながら満腹となったところで、
私の向かいに座っていたI氏が
「うわぁ〜!」と言って、アタマを払いました。

見上げると、天井には大きな換気扇とむき出しのダクト。

空調の水がたれてきたのかと思いきや、
テーブルの上には、スイカの種に似た、黒くて丸い粒。

三人で、その粒をしげしげと眺めたところ、
どうやらネズミのウン○のようです。
ツヤツヤと光るソレは、出来たてホヤホヤのようでした。

これが、I氏のつむじを直撃したのです。

食器を下げにきた店員さんに、
「天井から、こんなものが降ってきました」
と、指し示したところ、
店員さんは「あっ!」というような顔をして、
(でも、慣れた様子で)ソレを片付けてくれました。
その様子で、ソレがネズミのウン○であることを確信。

I氏はハートに大きなダメージを受けました。

「きっと、ウンがついたのよ」
と、ありきたりの、使い古された慰めを言いながら、
自分でなくて良かったと思うのでした。

少し後、先程の店員さんがテーブルにやってきて
「大変、ご不快な思いをさせて申し訳ありません。
本日のお代は全額無料にさせてください」
と、言うではありませんか。

正直者で真面目な三人は、
「それではかえって申し訳ない」
と、辞退したのですが、
店員さんは、「無料」を主張します。

こういう押し問答は、良きタイミングで終止符を打たねば
お互い引っ込みがつかなくなるものです。

数回のやりとりの後、しっかり(ちゃっかり?)者の私が、
「では、お言葉に甘えて」
と、落し所の一言を放ち、結局、全額無料にしていただきました。

私とT氏は、思いがけず、I氏のウンを分けていただいたのです。

「Iさん、ごちそうさま」

私たちのお礼に、I氏は複雑な表情を浮かべていましたが、
店を出る頃にはすっかりダメージを払拭し、
いつもの笑顔で、「うまかった〜!また来るぞ〜!」と言うほど。

料理は美味しく、サービスも良かったのですが、
天井でネズミの運動会・・・となると、
お店の名前を書くことができません。
営業妨害になってしまいます。
したがって料理の写真もアップできず、残念です。

それにしても、食後の出来事で良かった。
そして、私のアタマに落ちなくて良かった。
と、しみじみ思うのでした。(Iさん、ごめんなさい)



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