2015年7月31日金曜日

オリンピック騒動

スポーツは、観るのもやるのも好きではないため、
オリンピックにも興味がありません。

ですが、今回のオリンピック騒動には、
私が生業とする「デザイン」が関わっているため、
興味を持たざるを得ません。

新国立競技場、観光ボランティアユニフォーム、エンブレム、
いずれも、一デザイナーからしてみると、
「で、日本は何処に表現されているの?」の、一言に尽きます。

まったくロジックが見えず、形態が機能に従っていません。


新国立競技場のNG点については、既に語り尽くされているようですし、
ゼロベースで見直すとの発表もありましたので、次のデザインに期待します。
その際は、後々の維持管理と、最寄り駅からの動線も再考して欲しいです。

観光ボランティアユニフォーム・・・う〜ん・・・
カッコイイとかダサいとか、そのあたりは主観になりますが、
もっとも気になるのは、日の丸を冒涜して見えてしまうところ。
(日の丸は白地にこそ映える)

とはいえ、競技場と比べて、こちらはデザイナーの方には責任がないように感じます。
クライアントの複数の担当者の意見をそれぞれ尊重した、矛盾だらけの修正を加えられ、
元のデザインをぐちゃぐちゃにされることはたまにあるのですが、
そのケースを彷彿とさせるにおいがあります。
ジャンルは違えど、デザイナーの嗅覚で、そのように感じます。

服飾デザイナーさんへ上手にオーダーできないのであれば、
もう、いっそ、法被にすれば良いのに。

ボランティアさんたちが着るものですから、
ご自身の用事を済ませて、現地に駆けつけてもパッと羽織れる便利さ。
日本の祭りの象徴のひとつですし、
語学力や文化知識のスキルに合わせた色分けなども容易です。
なにより「反物を直線で裁って縫う」という行為の裏には、
「繰り回し」という日本の文化がありますから。

それに、会津木綿で福島へ大量発注すれば、
少しは復興の足しにもなるだろうな〜、なんて考えてしまいます。


そして、盗作疑惑のエンブレム。
盗作かどうかは本人のみぞ知るところですが、
それ以前に、デザインの完成度が気になります。

1)円形も、コンセプトである3つのTも見えない。
Tの文字の周囲に円形が見えるようにパーツを配置したらしいですが、
錯視により円形を浮かび上がらせるには、少しパーツの面積が足りない。
さらに、右の円がそのシルエットを邪魔していて、
ますます意図された円形が見えてきません。
しかも、右下の三角(本来は上にあるべきTの横画)のせいで、
TとLの二文字を連想させるのみで、3つのTは見えません。
(なぜ L が見える必要があるのか?)

2)単色(二階調)表現で成立するのか?
とくに、パラリンピックのほうは、そのまま単色にしたら
もう、どこにもTの文字は見えません。
反転させたら、本編と同じになってしまいますし、
パーツ間にスペースを取ったら、何が何やら。

盗作を疑われた際に、リエージュ劇場のロゴは白黒、
オリンピックエンブレムは和風の色、という違いが語られますが、
この種の図案は、白黒の二階調で成立しないと、中途半端だと思うのです。

布や金属への単色シルク印刷や、社章のように小さな型を起こすケースもあります。
プロダクトデザインへの展開となれば、極小の刻印を要するケースもあります。
そうなると、色や濃度で見え方を調整することは不可能です。
どのようなケースでも、カラー版と同様に美しく、意図の伝わる再現性をもつものが
良い図案だと教えられてきました。昭和のデザイナーは(笑)。

印刷技術が発達し、どんなものにもフルカラーでプリントできる今の時代に、
この教えは時代錯誤かもしれませんが、
出来なくてやらないことと、出来るけれど端折ることには、
大きな違いがあるのです。


盗作疑惑の根本的な原因は、Tの文字をモチーフにしたことにあると思っています。
アルファベットの文化圏でない日本で、なぜ T をモチーフにしたのでしょうか?
日本よりはるかに人口の多いアルファベットの文化圏には、
似たものが存在することが容易に想像がつくので、私だったら避けます。

日本には、家紋や屋号紋といった、すばらしいエンブレム文化がありますから
そういうったものをお手本に、他国では思いつかないような、
日本らしいデザインができるはずだと思うのですが。

いえ、きっと、応募された中には、そういうデザインもあったはずで、
この件も競技場と同様に、選者の文化度と事後への想像力が問われます。


それにしても、安倍首相のもと「美しい国、日本」を目指すはずが、
世界へ向けて「日本文化」をないがしろにしたデザインを発信しているのは
一体、どういうことなのか、なんだかモヤモヤしてしまいます。