スポーツは、観るのもやるのも好きではないため、
オリンピックにも興味がありません。
ですが、今回のオリンピック騒動には、
私が生業とする「デザイン」が関わっているため、
興味を持たざるを得ません。
新国立競技場、観光ボランティアユニフォーム、エンブレム、
いずれも、一デザイナーからしてみると、
「で、日本は何処に表現されているの?」の、一言に尽きます。
まったくロジックが見えず、形態が機能に従っていません。
新国立競技場のNG点については、既に語り尽くされているようですし、
ゼロベースで見直すとの発表もありましたので、次のデザインに期待します。
その際は、後々の維持管理と、最寄り駅からの動線も再考して欲しいです。
観光ボランティアユニフォーム・・・う〜ん・・・
カッコイイとかダサいとか、そのあたりは主観になりますが、
もっとも気になるのは、日の丸を冒涜して見えてしまうところ。
(日の丸は白地にこそ映える)
とはいえ、競技場と比べて、こちらはデザイナーの方には責任がないように感じます。
クライアントの複数の担当者の意見をそれぞれ尊重した、矛盾だらけの修正を加えられ、
元のデザインをぐちゃぐちゃにされることはたまにあるのですが、
そのケースを彷彿とさせるにおいがあります。
ジャンルは違えど、デザイナーの嗅覚で、そのように感じます。
服飾デザイナーさんへ上手にオーダーできないのであれば、
もう、いっそ、法被にすれば良いのに。
ボランティアさんたちが着るものですから、
ご自身の用事を済ませて、現地に駆けつけてもパッと羽織れる便利さ。
日本の祭りの象徴のひとつですし、
語学力や文化知識のスキルに合わせた色分けなども容易です。
なにより「反物を直線で裁って縫う」という行為の裏には、
「繰り回し」という日本の文化がありますから。
それに、会津木綿で福島へ大量発注すれば、
少しは復興の足しにもなるだろうな〜、なんて考えてしまいます。
そして、盗作疑惑のエンブレム。
盗作かどうかは本人のみぞ知るところですが、
それ以前に、デザインの完成度が気になります。
1)円形も、コンセプトである3つのTも見えない。
Tの文字の周囲に円形が見えるようにパーツを配置したらしいですが、
錯視により円形を浮かび上がらせるには、少しパーツの面積が足りない。
さらに、右の円がそのシルエットを邪魔していて、
ますます意図された円形が見えてきません。
しかも、右下の三角(本来は上にあるべきTの横画)のせいで、
TとLの二文字を連想させるのみで、3つのTは見えません。
(なぜ L が見える必要があるのか?)
2)単色(二階調)表現で成立するのか?
とくに、パラリンピックのほうは、そのまま単色にしたら
もう、どこにもTの文字は見えません。
反転させたら、本編と同じになってしまいますし、
パーツ間にスペースを取ったら、何が何やら。
盗作を疑われた際に、リエージュ劇場のロゴは白黒、
オリンピックエンブレムは和風の色、という違いが語られますが、
この種の図案は、白黒の二階調で成立しないと、中途半端だと思うのです。
布や金属への単色シルク印刷や、社章のように小さな型を起こすケースもあります。
プロダクトデザインへの展開となれば、極小の刻印を要するケースもあります。
そうなると、色や濃度で見え方を調整することは不可能です。
どのようなケースでも、カラー版と同様に美しく、意図の伝わる再現性をもつものが
良い図案だと教えられてきました。昭和のデザイナーは(笑)。
印刷技術が発達し、どんなものにもフルカラーでプリントできる今の時代に、
この教えは時代錯誤かもしれませんが、
出来なくてやらないことと、出来るけれど端折ることには、
大きな違いがあるのです。
盗作疑惑の根本的な原因は、Tの文字をモチーフにしたことにあると思っています。
アルファベットの文化圏でない日本で、なぜ T をモチーフにしたのでしょうか?
日本よりはるかに人口の多いアルファベットの文化圏には、
似たものが存在することが容易に想像がつくので、私だったら避けます。
日本には、家紋や屋号紋といった、すばらしいエンブレム文化がありますから
そういうったものをお手本に、他国では思いつかないような、
日本らしいデザインができるはずだと思うのですが。
いえ、きっと、応募された中には、そういうデザインもあったはずで、
この件も競技場と同様に、選者の文化度と事後への想像力が問われます。
それにしても、安倍首相のもと「美しい国、日本」を目指すはずが、
世界へ向けて「日本文化」をないがしろにしたデザインを発信しているのは
一体、どういうことなのか、なんだかモヤモヤしてしまいます。
はじめまして。デザインの現場を離れて10年になります。
返信削除今は昔とは違うのか、と驚いた佐野氏のデザイン、私もakkoさんと、
同じ疑問を持ったのですが、これ、二階調だと、どうするの?、と。
私が現場にいた頃は、ロゴの制作を頼まれたら、1案に対して、
カラー、グレースケール、二階調と3つ用意して,提示するのが当たり前でした。
今はもう、違うのでしょうか。
印刷技術が発達したので、二階調は必要がない?(な、わけないですよね)
いや、五輪エンブレムは、カラーしか使わないから、いいんだって事?
ほんと不思議に思いました。
招致の際の桜のリースのロゴは、そういった条件は満たしていたので、よけいに。
う〜ん、私が時代遅れなのでしょうかね。
たけさま
返信削除コメントありがとうございます。
同じ疑問を持たれた方がいらして安心しました。
エンブレムはメダルに使用されるケースも過去にはあったようですし、
記念キーホルダーやストラップなど、金属で再現されることは可能性として高いです。
桜のリースが箔押しされたものを拝見しましたが、キレイに再現されていましたよね。
盗作かどうか以前に、コンセプトの浅さ、平面分割としての完成度の低さ、
五輪マークとの色合わせの悪さ、なぜ、これが選ばれたのか不思議でしたが、
その後のニュースで、合点がいきました。
私もたけさんも、時代遅れじゃないですよ〜^^
ご返信をありがとうございました。
返信削除テレビやインターネットでは、あまり言われてない事なので、
検索で調べてて、こちらを見つけました。
実際どうなるかは、静観して見届けます。ありがとうございました。
たけさま
返信削除仰る通り、デザインの持つ機能については
どのメディアでも語られていませんよね。
どのような決着を見るのか、静観いたしましょう。